2010年9月23日木曜日

他事業紹介:『アニメ・スピードピッチin Tokyo 2010』/公益財団法人ユニジャパン

今回は、若手アニメーター育成プロジェクト以外で、日本のアニメ/アニメーター・演出のために行われている取組みをご紹介します。

『アニメ・スピードピッチin Tokyo 2010』は、「北米大手テレビアニメーション会社で企画開発を担当するプロデューサーに対して、日本のクリエイターが直接、自分の企画を提案・プレゼンする」という事業です。具体的には、監督または監督志望のアニメーターや演出などの個人クリエーターらから企画を募集し、そのうち60組について、東京都内に招いた北米の大手テレビアニメ会社の企画開発担当プロデューサーらに対して直接、自分の企画を売り込む機会をセッティングされるそうです。運営は公益財団法人ユニジャパンで、経済産業省との共同事業とされています。

※ ユニジャパンの募集案内
 http://www.unijapan.org/news/unijapan/speedpitch.html
※ この事業に関する報道
 http://animeanime.jp/news/archives/2010/09/post_1343.html

募集期間はタイトで、応募締切は来週末、平成22年9月30日(木)とされています。ただし、応募時には企画の提出は不要ということですので、企画の準備はもう少し時間がありそうです。プロデューサーへのプレゼン時間も、1社あたり約6分程度と限られていますので、この段階で企画資料の分量は要求されていないように思われます。もちろん、通訳はプロジェクト側で準備されるとのこと。

今年度から新たに始まった事業ということで、売り込んだ企画の秘密保持や企画が採用された場合の権利の取扱い等、詳細が明らかになっていない部分もあります。しかし、これらは本来的には、当事者間の交渉により解決されるべき事柄です。肝心なのは、個々のアニメ制作に携わるクリエーターが、自ら温めた企画を形にするチャンスが増えるということでしょう。この事業を通じて企画が採用された場合、監督の適正な権利がきちんと保持されるよう、形になった後のサポートも期待したいですね。

この事業を通じて、新しい才能が世に出ることを楽しみにしたいと思います。

2010年9月17日金曜日

「ご意見を承る会」のご案内

お待たせしました。予てお知らせしておりました「ご意見を承る会」について、以下の要領で開催できる運びとなりました。

これは、若手アニメーター育成プロジェクトに関するご意見・ご要望を頂戴し、今後のプロジェクト運営及び同種の取り組みに反映させていくための取り組みです。お預かりしたご意見は、文化庁をはじめ、関係諸機関にもお伝えして参ります。皆様ご多用とは存じますが、どうぞ奮ってご参加下さい。

1.アニメーション制作会社等、関係事業者様向け(事前登録制)
  日時:10月18日(月) 13:30~15:30(開場:13:15)
  場所:練馬産業会館
  ※最寄り駅:練馬駅徒歩8分(都営大江戸線・西武池袋線)

2.アニメーター・演出等、関係個人様向け(事前登録制)
  日時:11月25日(木) 13:30~15:30(開場:13:15)
  場所:練馬産業会館
  ※最寄り駅:練馬駅徒歩8分(都営大江戸線・西武池袋線)

3.備考
  参加を希望される方は、下記URLより事前のご登録をお願いします。開催日の1週間前ころを目処に確認のメールをお送りします。なお、希望者多数の場合は定員に達し次第、募集を締め切らせていただく場合がございます。悪しからずご了承下さい。
  個人情報保護のため申込みフォームにはSSLを使用しています。当団体のサーバの契約上ドメインが異なりますが、実体はJAniCA管理の同一サーバとなっておりますのでご安心ください。

  事業者様向け http://p.tl/e5aS

  個人様向け PC:http://p.tl/ri-K
          携帯:http://p.tl/tRKy

  お問い合わせ
   プロジェクト事務局 担当:大坪(ohtsubo@janica.jp)

2010年9月12日日曜日

全体講義 第1回のご紹介

8月20日(金)・21日(土)の2日間にわたり行われた、全体講義の概要をお伝えします。



今回の講義は、合計3回・各回2日ずつ行われる全体講義の1回目です。若手アニメーター育成プロジェクトはOJT、実際に作品制作を行う過程でのトレーニングを主としています。OJTとは別に、これを補足するため行われるのが全体講義です。あえて「全体」講義と呼んでいるのは、制作期間中、各社がそれぞれ工夫をされた個別講義を行っておられるため、これらと区別する趣旨です。

先ず、全体講義のカリキュラムをご紹介します。


8月20日(金)
 13:00~14:00 事業説明
 14:00~14:10 サムネイル課題の描き方
 14:30~16:30 講義『アニメーターの技術とは』井上俊之(アニメーター)
 16:45~17:45 講義『アニメーター用語の豆知識』

8月21日(土)
 10:00~11:30 講義『契約の基礎・社会知識等』
 13:00~13:30 説明『グループミーティングについて』
 13:30~15:10 グループミーティング
        [解 散]
 15:30~17:30 若手ヒアリング(P.A.worksのみ)

各チームの若手アニメーターは、これら全てについて出席していただくようお願いしました。P.A.worksさんは、富山からバスを仕立てていただくなどして、若手原画12名を含む総勢19名にご参加いただきました。

全体講義のような座学は、それを受講したからといって直ぐに技術が身についたりする類のものではありません。にも関わらず、わざわざ作業を止めてまでお越しいただいた狙いは、各チームの枠を超え、プロジェクトに参加している全ての若手アニメーターの皆さんに同期であるという意識を持っていただくと同時に、他にも3つのチームが同様の制作をされていることに直接触れてもらい、健全な競争意識を養っていただくことにあります。

とはいえ、普段慣れない座学、それも小難しい事業や法律の説明などが多かったので、実施する前は寝てしまう方が続出するのではないかと心配しました。しかし、これは杞憂でした。皆さん、非常に集中して講義を受けていただき、居眠りなどはほとんどありませんでした。

また、同期意識を養っていただくために実施したグループミーティングも好評でした。グループミーティングは、アニメーターとしての将来のキャリアをどのように考えるかなどについて、各チームのスタッフをシャッフルして、5人前後のグループに分けて行いました。とりわけ、普段、他社の若手に接する機会の少ないP.A.worksの若手アニメーターの皆さんからは、「自分たちだけの悩みかと思っていたことが、そうではないことが分かってほっとした」等といった声が聞かれました。

なお、初日に行われたアニメーター・井上俊之氏による講義は、事前に各社から頂戴した「プロジェクトに参加している以外のスタッフも聴講させたい」との声にお応えした結果、全部で120名程度という多くの方々の参加をいただきました。JAniCA会員である若手についても、応募のあった数名にご参加いただくことができました。

全体講義の残り2回は、10月と11月にそれぞれ行う予定です。

2010年9月1日水曜日

各社ラインの進捗状況(9月1日現在)

9月を迎え、プロジェクト参加各社の制作ラインもいよいよ動き始めました。厳しいスケジュールの中、本当に皆さん、よく頑張って下さっています。各社の進捗状況についてご紹介します。

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『おぢいさんのランプ』/テレコム・アニメーションフィルム

8月23日(月)に初回の作打ちが行われました。既に脚本、絵コンテ、キャラクター設定、美術設定もご提出をいただいています。キャラクターと美術は1冊の設定資料集という形で、そのまま出版できそうなくらい、綺麗にまとめていただきました。和装が主ということで、帯の位置や和服の装いなど、丁寧な作画注意事項が添えられるなどしています。

作打ちには育成プロマネの神村と担当ヒアリング委員の森田も同席をさせていただきました。私も先週末、既に一連の作打ちが終了し、作画作業が開始されたスタジオにお邪魔してきました。スタジオ奥の一角がプロジェクトチームの作業場に割り当てられており、滝口監督をはじめ、メンバーの方々がおられました。資料写真等を見ながらより詳細な設定を起こしている方、レイアウトを取っている方等々、皆さんがそれぞれの作業をしておられました。紙に書いたプロジェクトがこうして形を得つつあるのを見て、なんだかとても不思議な印象を受けました。

テレコムさんの若手原画はテレコムさんだけでなく、スタジオコメットさんからも3名のご参加をいただいております。担当制作さんは「いずれも意欲があり、社内の若手にも良い影響を与えてくれると思う」と話しておられました。


『キズナ 一撃』/ascension

8月23日(月)に初回の作打ちが行われました。まだ絵コンテの全ては上がっていませんが、できあがった前半パートから作画作業は始められていると聞いています。絵コンテも完成見込みと聞いており、進捗は順調です。作打ちには、同じく神村と担当ヒアリング委員の深井、それに事務局長の大坪が同席させていただきました。

大坪の報告によれば、本郷監督はプロジェクトの趣旨を踏まえ、とても意欲的で熱心な指示等をされたということでした。キズナは、選定評価委員会において、「アニメーターが描きたくなる企画」等として、その作品的魅力がとても高い評価を受けた作品です。絵コンテを拝読するのを楽しみにしています。

なお、アセンションさんの若手原画もテレコムさん同様、Wishさんから3名、ボンズさんから2名のご参加をいただいています。プロジェクトにご参加いただける数には、残念ながら限りがあります。その枠を越え、プロジェクトを広くご利用いただけるのは有り難いことです。


『たんすわらし。』/Production I.G

明日、9月2日(木)に初回の作打ちが行われる予定です。明日の作打ちには、私と担当ヒアリング委員の谷津が同席します。I.Gさんは、9月半ばに国分寺から三鷹への社屋移転も控えておられます。一時はこのまま、移転終了まで作画インがずれ込むのではとも危惧しましたが、幸い杞憂に終わりました。

私自身は絵コンテの善し悪しを見分ける目を持ちませんが、一読して非常に良い印象を受けました。平田さんの原案を黄瀬さんがデザインされた丸みのあるキャラクターも魅力的です。


『万能野菜 ニンニンマン』/P.A.works

8月26日(木)に初回の作打ちが行われました。こちらも既に脚本、絵コンテ、キャラクター設定をいただいています。現時点で本編絵コンテは345カット・140ページ。349カット・178ページのテレコムさんより量は少なめですが、全体を通じて密度が高く、生き生きしたキャラクターが魅力的です。

PAさんではプロジェクトを機に社内講義をされるなど、プロジェクトの求める内容を越え、プロジェクトをご活用いただいております。作画期間中は、普段東京におられる吉原監督も富山のスタジオに詰めておられるそうです。尺(作品の長さ)が少々心配ですが、これも完成が楽しみです。

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次回更新では、8月に行われた全体講義(第1回/全3回)の様子をご報告する予定です。