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2010年12月1日水曜日

全体講義 第3回のご紹介

11月18日(木)・19日(金)の2日間にわたり行われた、第3回全体講義の概要をお伝えします。


各2日ずつで全3回を予定していた全体講義も今回で全日程が終了、最終回となる今回は、育成検討委員の
川元利浩さんによるパース講座と、プロジェクトに参加した若手アニメーターの皆さんが参加しての討論会を
中心にカリキュラムが組まれました。

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11月18日(木)
 12:30~13:30 全体講義アンケートへの回答
            報告者:神村幸子(育成検討委員会)
 13:40~16:50 講義『パース講座』
           講師:川元利浩(ボンズ・育成検討委員)
 17:05~ 若手アニメーターヒアリング(P.A.works)

11月19日(金)
 10:00~12:00 サムネイルを見る
           進行:神村幸子(PM、育成検討委員)
 13:10~16:10 討論『アニメーター職種の未来について』
           進行:後藤隆幸(I.G、育成検討委員)
 16:20~17:20 アンケート記入
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初日の1コマ目「全体講義アンケートへの回答」は、プロジェクト開始当初、プロジェクトに参加される若手アニメーターの皆さんにお願いしたアンケートに対する育成検討委員会からのコメントをお話しいただきました。全体講義のカリキュラムは、育成検討委員会(IG・後藤さん、ボンズ・川元さん、夢幻館・椛島さん、神村幸子さん)で検討し、お決めいただいたものです。カリキュラムの決定に際し、受講される若手アニメーターの皆さんのご要望も可能な限り、取り入れたいということでアンケートを行いました。この講義では、アンケートに書かれた質問、意見について、育成検討委員会が応えるという形で意見交換を図りました。


初日2コマ目はパース講座です。ボンズの中核で、育成検討委員もお願いしている川元さんにお願いすることができました。


2日目の1コマ目では、これまで12週間にわたって各週1つずつ、若手アニメーターの皆さんからご提出いただいたサムネイル課題を机上に揃え、若手アニメーターの皆さんで回覧していただきました。今回、サムネイル課題の提出をお願いしている若手アニメーターは4社で計32名。それぞれ12課題をお願いしていますので、カット数は合わせて384となります。


育成検討委員にはこの全カットについて、初日の講義が終わった後、18時から22時過ぎまで4時間以上をかけてチェックいただき、「よい」と思うカットにそれぞれシールを貼っていただきました。委員は4人ですので、全員が「よい」と思ったカットには4つのシール、1人だけなら1つのシールといった具合です。


384カット全てを並べるのは難しいということもあって、講義では上位の約半数を並べ、これらのサムネイルを書いた若手アニメーターの皆さんに見ていただきました。サムネイルには所属社名と個人名も記載されています。若手アニメーターの方々からは、「自分のサムネイルに4つの星が付いているのを見て、とても嬉しかった」「他の若手が、自分とは異なる解釈で描いたサムネイルを見るのがとても参考になった」などの声が上がっていました。


2日目の2コマ目は討論会。右手の写真にあるように、若手アニメーターの皆さんに車座になっていただき、育成検討委員の後藤さんによる司会で途中休憩を挟み、約3時間にわたって意見交換をしていただきました。若手アニメーター全員から感想と要望を寄せていただきつつ、それぞれに育成検討委員やプロマネから回答、または意見を寄せるなどし、最後はこれからを担う若きアニメーターとして、先輩や国に何を望むかといったことについても意見をいただきました。


最後のアンケートは、ある意味この事業の総括り。プロジェクトの主役である若手アニメーターの皆さんから、相当詳細な声をいただくため、A4版9ページに及ぶ調査表にご記入いただきました。頂戴した調査表を見ると、今後の取り組みを行う際に活かしていこう、と思うだけの丁寧で前向きな意見を多く寄せていただいておりました。


全体講義を終えたことにより、OJTとOff-JTというプロジェクトのコア部分はある意味、無事終了したということができます。しかし、作品づくりはこれからが最後の追い込みです。幸いにして、多くの皆様のご厚意を得て、作品を多くの方に観ていただく機会を確保することができました。作品が多くの方の目に触れ、評価を経ることにより、プロジェクトに参加いただいたアニメーターを含めたスタッフの皆さんの意識とモチベーションが高まっていくものと思います。その意味では、作品が無事完成し、上映・放送が実行されるまで、プロジェクトは終わりません。プロジェクト事務局一同も、それまで関係者の皆様と一緒により良い運営を心がけていきたいと考えています。


2010年11月23日火曜日

全体講義 第2回のご紹介

10月7日(木)・8日(金)の2日間にわたり行われた、第2回全体講義の概要をお伝えします。


全体講義の第2回目は、作画工程真っ盛りの10月初旬、7日(木)・8日(金)の両日に渡って行われました。カリキュラムは次のとおりです。

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10月7日(木)
 13:00~14:30 講義『産業構造、職業倫理、コスト意識、スケジュール管理等について』
           講 師:堀川憲司(P.A.works代表取締役)
 14:40~15:10 報告『第1回グループミーティングのまとめ』
           報告者:深井利行(ヒアリング委員)
 15:10~15:30 グループミーティング/説明
 15:30~17:20 グループミーティング(途中休憩1回)
           『制作工程の問題と分析、対策』
 17:30~19:00 若手アニメーターヒアリング(4社全て)

10月8日(金)
 10:00~11:00 講義『アフレコの概論、基礎知識、声優が困る作画等』
           講 師:佐藤正治(声優、青二プロダクション)
 11:10~12:30 講義『演技指導・概論から』
           講 師:佐藤正治(同上)
 13:30~15:10 講義『演技指導』
           講 師:佐藤正治(同上)
 15:20~17:00 講義『演技指導』
           講 師:佐藤正治(同上)
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初日のテーマは、アニメーターとしての立場を離れたプロデューサーの視点から、商業アニメーターにとっての「仕事」である”アニメーション制作”を学び、長く働くことのできるアニメーターとはどのようなアニメーターかを考えよう、というものでした。講師をお願いしたP.A.worksの堀川社長からは、「スタジオ経営者が20代、30代、そして40代のアニメーターに求めること」など、日頃は耳にすることのない率直なコメントを伺うことができました。

2日目は打って変わって、”演技”です。良いアニメーターは良き演技者であるともいわれます。しかし考えてみれば、俳優や声優といった演技そのものを探求する職業があるように、演技とはそれ自体が精妙で奥深いものです。アニメーターは普段からモノの動きやヒとの仕草といった万物に対する観察を怠らないといいます。しかし、仕事以外でも演劇などをされることの多い声優さんと異なり、演劇をすることを趣味にしているアニメーター、という話はほとんど聞きません。

そこで、今回はベテラン声優である佐藤正治さん(青二プロ所属)に講師をお願いし、簡単な演技指導の後、若手アニメーター全員が実際に小グループに分かれて演技をしてみる、という講義を行いました。なお、事業を始めるに当たって若手アニメーターの皆さんに出していただいたアンケートでも、演技指導は希望する項目の上位に挙げられていました。

台本を手に、舞台で身振り手振りを交えつつ、最初は慣れない演技に戸惑っていた若手アニメーターの皆さんですが、とても良い刺激になった様です。受講を終えた皆さんからは、「明日からの仕事に役立つ」「非常に勉強になった」など、とても好評を博していました。

全体講義も、最終となる第3回が先週、11月17日(木)・18日(金)の両日に無事、終了しました。また記事を改めてご報告します。

2010年9月12日日曜日

全体講義 第1回のご紹介

8月20日(金)・21日(土)の2日間にわたり行われた、全体講義の概要をお伝えします。



今回の講義は、合計3回・各回2日ずつ行われる全体講義の1回目です。若手アニメーター育成プロジェクトはOJT、実際に作品制作を行う過程でのトレーニングを主としています。OJTとは別に、これを補足するため行われるのが全体講義です。あえて「全体」講義と呼んでいるのは、制作期間中、各社がそれぞれ工夫をされた個別講義を行っておられるため、これらと区別する趣旨です。

先ず、全体講義のカリキュラムをご紹介します。


8月20日(金)
 13:00~14:00 事業説明
 14:00~14:10 サムネイル課題の描き方
 14:30~16:30 講義『アニメーターの技術とは』井上俊之(アニメーター)
 16:45~17:45 講義『アニメーター用語の豆知識』

8月21日(土)
 10:00~11:30 講義『契約の基礎・社会知識等』
 13:00~13:30 説明『グループミーティングについて』
 13:30~15:10 グループミーティング
        [解 散]
 15:30~17:30 若手ヒアリング(P.A.worksのみ)

各チームの若手アニメーターは、これら全てについて出席していただくようお願いしました。P.A.worksさんは、富山からバスを仕立てていただくなどして、若手原画12名を含む総勢19名にご参加いただきました。

全体講義のような座学は、それを受講したからといって直ぐに技術が身についたりする類のものではありません。にも関わらず、わざわざ作業を止めてまでお越しいただいた狙いは、各チームの枠を超え、プロジェクトに参加している全ての若手アニメーターの皆さんに同期であるという意識を持っていただくと同時に、他にも3つのチームが同様の制作をされていることに直接触れてもらい、健全な競争意識を養っていただくことにあります。

とはいえ、普段慣れない座学、それも小難しい事業や法律の説明などが多かったので、実施する前は寝てしまう方が続出するのではないかと心配しました。しかし、これは杞憂でした。皆さん、非常に集中して講義を受けていただき、居眠りなどはほとんどありませんでした。

また、同期意識を養っていただくために実施したグループミーティングも好評でした。グループミーティングは、アニメーターとしての将来のキャリアをどのように考えるかなどについて、各チームのスタッフをシャッフルして、5人前後のグループに分けて行いました。とりわけ、普段、他社の若手に接する機会の少ないP.A.worksの若手アニメーターの皆さんからは、「自分たちだけの悩みかと思っていたことが、そうではないことが分かってほっとした」等といった声が聞かれました。

なお、初日に行われたアニメーター・井上俊之氏による講義は、事前に各社から頂戴した「プロジェクトに参加している以外のスタッフも聴講させたい」との声にお応えした結果、全部で120名程度という多くの方々の参加をいただきました。JAniCA会員である若手についても、応募のあった数名にご参加いただくことができました。

全体講義の残り2回は、10月と11月にそれぞれ行う予定です。

2010年7月30日金曜日

「育成検討委員会からの提言」のご紹介

前回の記事でご紹介した「育成検討委員会からの提言」の内容をご紹介します。

この提言は、アニメーター育成検討委員会が、各制作ラインにおいて実践いただきたいOJTの方針を19のポイントにまとめたものです。既に各社宛には、今回のプロジェクトにご参加いただく主要スタッフの皆様にお配りいただくよう、お願いしています。

OJTとは、現場における具体的仕事を通じた計画的指導です。具体的な計画や方針なしに、ただ「背中を見て覚えろ」というのとは異なります。各制作ラインで実際の指導を担われる監督、作画監督および作画監督補らの皆さんには、普段と異なるやり方でご負担をおかけすることになりますが、意欲的に取り組んでいただけるものと期待しております。

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文化庁・平成22年度若手アニメーター等人材育成事業
アニメーター育成検討委員会

若手原画育成On the Job Trainingの中でおこなってほしいこと


若手アニメーター育成に関して、演技指導は監督が、作画技術に関しては作画監督が指導すると思います。育成検討委員会での議論の結果、今回は各社の自主的な取り組みを尊重し、それぞれの育成目標達成に重きを置くことになりました。

したがいまして、育成検討委員会からおねがいすることは、若手原画向けのアニメーター育成効果を検証するためのサムネイル課題以外には、非常に基本的なワークフローに関することのみです。

育成プロジェクトのなかで以下の取り組みをおこなってください。

a) 制作は、若手原画に対し、「アニメーターのための16のポイント」(添付資料)とこのプリントを各1部ずつ配布してください。

b) 制作は、作打ちの前に、アニメーターが絵コンテを読み込む時間を作ってください。先に読んでおかないと、作打ちで的確な質問ができず、コンテ内容がよく理解できません。

c) 作打ちには、作画監督、作監補、中堅原画、若手原画、社内動画も参加してもらってください。

d) 監督から、作打ちは何のためにするのか、原画が理解するべきポイントはどこかを教えてください。打ち合わせでは、わからないことは質問し、聞いたことはメモを取るように指導してください。

e) 社内動画はもちろん、外注動画にも絵コンテを読ませてあげてください。現実的に考えて、返却する回覧用絵コンテでかまいません。作品内容もカットの意味もわからず動画するのは楽しくないでしょう。動画が単純作業になってしまいます。

f) 社内動画用に動画用絵コンテを1冊用意してあげてください。

g) ラッシュチェックは作画監督、作監補、中堅原画、若手原画、社内動画の全員を呼んでおこなってください。

h) 監督から、ラッシュチェックは何のためにするのか教えてください。各工程の担当者がおのおのの立場でチェックする意味を教えてください。

i) ラッシュリテイクは作画監督が直してしまうのではなく、できるだけ原画本人に返してください。ラッシュリテイクの意味を学ぶためです。

j) プロジェクトに参加するアニメーターには、次のとおり専念義務が課されています。特に、若手原画は、作画期間中の3ヶ月間、この作品以外の仕事に関わることはできません。できるだけ若手原画本人も3ヶ月間の目標をたて、それは美術書1冊の模写でもかまいませんが、余暇は自分の将来における財産を作るための勉強に費やしてください。
○作画室の開室時間中、プロジェクト以外の仕事をしてはならない方
作画監督、作画監督補、中堅原画
○作画期間中、プロジェクト以外の仕事をしてはならない方
若手原画

k) 監督リテイク、作画監督リテイク等は、黙って机の上に置いていくのではなく、本人を呼んで考え方を説明し、自分で描き直をしてもらってください。(最終的には描き直しになったとしても、考える習慣づけのために最初は自分で描いてもらってください)

l) 動画リテイクも社内、社外にかかわらず、可能な限り動画本人を呼び、教える形でリテイクしてください。ふだんできない勉強をしてもらうための単価設定です。

m) 社内動画は、この作品で担当した動画のすべてについて、動きと演技については原画に(定時から作画室にいます)チェックを受けてください。そのカットの動きを一番理解しているのは原画です。動画注意事項に関わる動画の品質維持については、通常どおり動画検査におねがいしてください。

n) 若手原画は、自分が担当した原画の社外動画も、動検前に自分で確認してください。動きや演技でまちがいがあればメモを入れて動検へ回すようにします。動画が割れない原画を描いていないか、動画がまちがいやすい指示をしていないか学ぶためです。

o) 若手原画は、必要な小物設定等を、まず自分で調べ、設定を描き、作画監督に見てもらってください。(最終的には作監が描き直したとしても)仕事をするとき、なんでも設定を待つのではなく、調べて学ぶ習慣をつけるためです。

p) 監督および作画監督は、カット分けではバラ出しをせず、まとまったシーンごとに割り振ってください。とくに若手にはできるだけ連続したカットのみを割り振り、シーンに責任を持ちシーンを自分で作って行く経験をさせてあげてください。

q) 監督および作画監督は、若手原画が30カット以上を担当できるカット割りをしてください。あるていどのカット数を担当しないと、必要な経験ができないからです。(※募集案内P14 (2)ア④ 若手原画12人で1人あたり32カット)

r) 監督、作画監督および制作は、若手原画の月収モデル(※P15 ウ)に配慮し、若手原画の月収が平均20万円ていど以上になるよう、カット分けしてください。若手原画には生活に困らない月収を確保する見込みと引き替えに専念義務が課されており、これがあるからこそ、描き直しをくり返す育成方法が可能になっているのです。事業主旨にあわせ、くれぐれも若手原画の平均収入維持にご協力ください。

s) 若手原画は毎週1回、1時間程度、サムネイルの課題に取り組んでください。制作は毎週回収し毎週末に原版を事務局へ提出してください。
以上

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いかがでしたでしょうか。少しでも、各制作ラインの稼働イメージを掴んでいただければ幸いです。実際にはこの「提言」を受け、更に各社なりの工夫を申し出てこられる例もありました。したがって、厳密にいえば制作スタイルはそれぞれ異なる部分も出てくることになると思われます。しかし、今回のプロジェクトにおける育成は、今回ご紹介した基本方針に則って行われます。

さて、理念や制度の説明が続いてしまいました。次回か、次々回あたりではいよいよ、各社の企画についてもご紹介していきたいと思います。どうぞお楽しみに。

2010年7月28日水曜日

ヒアリングチームについて

7月22日(木)の記事でご紹介したアニメーター育成検討委員会から、7月23日(金)、受託4社の各制作ラインに対して、「育成検討委員会からの提言」が提示されました。提言では、OJTで実践していただきたい方針が、全部で19のポイントにまとめられています。

教える側の監督、作画監督および作画監督補の方々、教わる側の若手(原画)アニメーターの方々の双方からざっくばらんに話を聞き、プロジェクトの進捗による変化を観察・記録すると共に、各社に提示された「育成検討委員会からの提言」がきちんと守られているかなどについて確認するのが、今回ご紹介するヒアリングチームです。

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ヒアリングチームは、深井利行さん((有)ブレインズ・ベース)、森田実さん(フリー)、谷津美弥子さん(フリー)および吉田仁さん(フリー、※初出時、お名前を1字誤って記載しておりました。お詫びして訂正いたします。)の皆様にお願いをすることができました。委員の構成は、3名がアニメーター、1名が制作進行(深井さん)となっています。深井さんはアニメーターの教育がご専門で、ウォルト・ディズニー・アニメーション・ジャパン株式会社(解散)でも同様のご経験をお持ちです。

委員には担当制作ラインが定められており、作画インから原画アップまでの約3ヶ月強の間、それぞれの担当制作ラインを訪問するなどして、監督から若手(原画)アニメーターまでのメインスタッフと面談を重ね、育成の現状を観察・記録すると同時に、現場からの要望などを聞き取っていただきます。

ヒアリングチームでは現在、ヒアリングに用いるテンプレート(ひな形)の検討が進められています。テンプレートは、各制作ラインからのヒアリングとその評価を統一した物差しに合わせて行うことで、後の比較対象を容易にするための仕組みです。監督、作画監督、作画監督補、中堅原画および若手(原画)アニメーターのそれぞれについて、各場面毎にどのような事項を聞き取るか等が記載されることになっています。ちなみに、ヒアリングは原画を担当するアニメーターだけでなく、動画検査や動画を担当する方々についても実施される見通しです。

いかによく検討された素晴らしい方針であっても、これを実際に当てはめてみれば、必ず改善すべき点は見つかるはずです。現場で起こる問題をきちんと観察・記録し、それを基に最初の方針を見直し、改めるべきところは改めていくことにより、アニメーター育成の方法論がより実践的、効果的なものとなっていくことを期待できます。しかし、限られた制作スケジュールの中、作品制作に取り組む現場のアニメーターの方々に記録を取れ、書類を書けということはできません。これを補うのが、ヒアリングチームです。

ヒアリングチームは、長年、現場でアニメーター育成に関わってこられたベテランアニメーターと制作の方々で構成されています。プロジェクトでは、現場をよく理解した当事者でもあるヒアリングチーム委員が、同じ仲間として話を聞くことにより、うわべだけではない生の事実を拾い出して下さることを期待しています。

ヒアリングチーム委員は、8月中旬に予定されている各社作打ちへの参加を皮切りに、8月下旬に開催される全体講義の一環として行われるグループミーティングへの参加等々、単に各制作ラインの作画室を折に触れて訪問するだけでなく、プロジェクトの要所をメインスタッフの方々と共にすることで、良質なヒアリングの前提となる信頼関係・仲間意識の醸成に努めていただくこととしています。

ヒアリングの結果は、書面にまとめられた上、アニメーター育成検討委員会に提出され、その検討を経た上で、年度末に提出される報告書に記載されます。

このようなヒアリングチームの役割を果たしていただくためには、アニメーター育成検討委員会との連携が重要です。そこで、アニメーター育成検討委員会には、ヒアリングチームからもオブザーバーとしてご参加いただき、育成方針策定の過程を直接見聞きしていただくことにより、情報と意識の共有を図っています。

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プロジェクト事務局側で育成を担うのは、アニメーター育成検討委員会と今回ご紹介したヒアリングチームです。プロジェクトの柱はあくまで現場のOJT([On the Job Training]=実際の作品制作の過程における計画的指導)にありますが、プロジェクトでは、今回触れた全体講義などのOFF-JT([OFF the Job Training]=作品制作を離れた講義等)も併用しています。

全体講義の第1回までは既に1ヶ月を切っており、こちらについても準備作業が急ピッチで進められています。全体講義は、原則として4社のメインスタッフが全てご参加いただくものです。(株)ピーエーワークスさんからは、富山から14名の若手原画を含む皆さんがおいでいただけることになっています。

これらOFF-JTの構成とそのねらいについては、記事を改めてご紹介させていただきます。

2010年7月22日木曜日

アニメーター育成検討委員会について

このプロジェクトは、その正式名称が「若手”アニメーター”等人材育成事業」と冠しているとおり、アニメーターの人材育成を主たる目的としています。プロジェクトの根幹、アニメーター育成の具体的方針を定めるのが、アニメーター育成検討委員会です。

アニメーター育成検討委員会には、椛島義夫さん((有)夢弦館)、神村幸子さん(フリー)、川元利浩さん((株)ボンズ)、後藤隆幸さん((株)プロダクション・アイジー)、4名のアニメーターの方々に委員としてご参加をいただくことができました。既に2回の委員会が開催されており、先週開かれた第2回委員会には、オブザーバーとして大塚康生さんにもおいでいただきました。


プロジェクトの人材育成に関する基本方針は、OJT(On the Job Training)=実際の作品制作の過程における計画的指導を主としつつ、OFF-JT(OFF the Job Training)=作品制作を離れた講義等の2つを、必要に応じて併用することとされています。

やや脱線しますが、プロジェクトが作画予算について用途制限を設けているのは、このOJTが理由です。プロジェクトに参加する若手(原画)アニメーターの皆さんは、作画期間中、プロジェクト以外の作品を担当することができません(専念義務)。その上、リテイク等についても、作画監督等による描き直しは基本的に認められておらず、若手(原画)アニメーターが2度3度と描きなおすことが求められます。このような方法では、当然、作業効率は著しく悪化すると予想されます。そこで、若手(原画)アニメーターの方々が、作画期間中、生活の心配をしないで作品制作と勉強に専念していただくため、いわゆる相場よりも高い単価が設定されました。


第2回委員会の主な議題は、OJT手法の検討、OFF-JT(全体講義および個別講義)の構成等でした。最初の全体講義が8月下旬に予定されているOFF-JTに関する解説は次回以降にさせていただくとして、この記事では、プロジェクトで採用されることとなったOJT手法のあらましについて、ご紹介します。

アニメーションの技法について、私自身は本来語るべき知識も技能も有していませんが、ウォルト・ディズニーのフルアニメーションが、いわゆる現代における2Dアニメーションの源流の1つであることについては、おそらく概ね異論のないところだろうと思います。

一方、アニメーターに必要な技能とは何かという根源的な問いかけについて、よく言われるのが”演技"です。アニメーション監督の片渕さんは、インタビュー記事の中で「アニメーターとは紙に絵を描いて演技をする俳優だ」「”演技”ができるアニメーターは必ず評価される。監督やプロデューサーにも見る目はあるので、その評価は収入につながるし、よそからも声がかかるようになる」と述べられています(週刊東洋経済、2010年7月24日号、84頁)。

プロジェクトにおける”若手(原画)アニメーター”については、新人ではなく、原則として動画アニメーターまたは原画アニメーターとして一定期間以上稼働した経験を有する方々とされています。こういった若手アニメーターの方々に対する各委員の評価として、止め絵やイラストは上手いというのがほぼ共通の見解でした。

そこで、”演技”力の向上の基礎となる”動かすことを考えながら描いていく”訓練として、大塚さんのまとめられた「アニメーターのための16のポイント」を読んでいただいた上、作画期間中、毎週サムネイル課題に取り組んでいただくこととなりました。

「アニメーターのための16のポイント」は、大塚さんらが1982年夏、ロサンゼルスで受けたレクチャーのポイントをまとめられたものです。講師はフランク・トーマスオリー・ジョンストン、いわゆるディズニーの”ナイン・オールドメン”のお二人です。受講者は、高畑勲さん、宮崎駿さん、大塚康生さん、友永和秀さん、富沢信雄さん、丹内司さん、丸山晃一さん、田中敦子さん、近藤喜文さん、篠原征子さん、山本二三さん、竹内孝次さんの計12名。何れも錚々たる顔ぶれですね(以上、大塚康生著『作画汗まみれ』増補改訂版・徳間書店、205頁より)。

サムネイルとは、「アニメーターのための16のポイント」の12番目に挙げられています。具体的には、動画用紙1枚に20から30程度の小さな絵を、簡単に手早く(30分~1時間程度)、ラフでよいので描きます。その中で、ある場面における一連の動作、例えば、「おばあさんがよっこらしょと立ち上がる」という一場面をできるだけ細かく、動きを分析して描きます。”紙の上で演技をする想像力”を養うのが目的です。

サムネイルは、今回のプロジェクトが取り組むOJT手法の一例に過ぎません。アニメーター育成検討委員会では、各受託制作会社で作品制作に取り組む監督、作画監督、作画監督補や中堅原画の皆さんにお願いする人材育成手法について、取りまとめ作業が急ピッチで行われています。


次世代を担う優れたアニメーターを育成する、と言葉でいうのは簡単です。しかし、そんな方法があればもうやっている、それが分からないから苦労しているんだといった辺りが、現場の皆さんの肌感覚でしょう。このプロジェクトでは、過去数十年に渡って、先達の多大なご苦労の上に集積された様々な情報や手法を基に、もっとも確実と思われる方法論を適用し、その過程や結果に関する情報をきちんと集め、それをまた分析していくことを毎年重ねていくことによって、現実に選びうる最も優れた方法論を見つけ出していきたいと考えています。

上記のうち、アニメーター育成の過程に関する情報収集を担うのが、ヒアリングチームです。ヒアリングチームの役割等については、また記事を改めてご紹介させていただきます。