2010年7月28日水曜日

ヒアリングチームについて

7月22日(木)の記事でご紹介したアニメーター育成検討委員会から、7月23日(金)、受託4社の各制作ラインに対して、「育成検討委員会からの提言」が提示されました。提言では、OJTで実践していただきたい方針が、全部で19のポイントにまとめられています。

教える側の監督、作画監督および作画監督補の方々、教わる側の若手(原画)アニメーターの方々の双方からざっくばらんに話を聞き、プロジェクトの進捗による変化を観察・記録すると共に、各社に提示された「育成検討委員会からの提言」がきちんと守られているかなどについて確認するのが、今回ご紹介するヒアリングチームです。

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ヒアリングチームは、深井利行さん((有)ブレインズ・ベース)、森田実さん(フリー)、谷津美弥子さん(フリー)および吉田仁さん(フリー、※初出時、お名前を1字誤って記載しておりました。お詫びして訂正いたします。)の皆様にお願いをすることができました。委員の構成は、3名がアニメーター、1名が制作進行(深井さん)となっています。深井さんはアニメーターの教育がご専門で、ウォルト・ディズニー・アニメーション・ジャパン株式会社(解散)でも同様のご経験をお持ちです。

委員には担当制作ラインが定められており、作画インから原画アップまでの約3ヶ月強の間、それぞれの担当制作ラインを訪問するなどして、監督から若手(原画)アニメーターまでのメインスタッフと面談を重ね、育成の現状を観察・記録すると同時に、現場からの要望などを聞き取っていただきます。

ヒアリングチームでは現在、ヒアリングに用いるテンプレート(ひな形)の検討が進められています。テンプレートは、各制作ラインからのヒアリングとその評価を統一した物差しに合わせて行うことで、後の比較対象を容易にするための仕組みです。監督、作画監督、作画監督補、中堅原画および若手(原画)アニメーターのそれぞれについて、各場面毎にどのような事項を聞き取るか等が記載されることになっています。ちなみに、ヒアリングは原画を担当するアニメーターだけでなく、動画検査や動画を担当する方々についても実施される見通しです。

いかによく検討された素晴らしい方針であっても、これを実際に当てはめてみれば、必ず改善すべき点は見つかるはずです。現場で起こる問題をきちんと観察・記録し、それを基に最初の方針を見直し、改めるべきところは改めていくことにより、アニメーター育成の方法論がより実践的、効果的なものとなっていくことを期待できます。しかし、限られた制作スケジュールの中、作品制作に取り組む現場のアニメーターの方々に記録を取れ、書類を書けということはできません。これを補うのが、ヒアリングチームです。

ヒアリングチームは、長年、現場でアニメーター育成に関わってこられたベテランアニメーターと制作の方々で構成されています。プロジェクトでは、現場をよく理解した当事者でもあるヒアリングチーム委員が、同じ仲間として話を聞くことにより、うわべだけではない生の事実を拾い出して下さることを期待しています。

ヒアリングチーム委員は、8月中旬に予定されている各社作打ちへの参加を皮切りに、8月下旬に開催される全体講義の一環として行われるグループミーティングへの参加等々、単に各制作ラインの作画室を折に触れて訪問するだけでなく、プロジェクトの要所をメインスタッフの方々と共にすることで、良質なヒアリングの前提となる信頼関係・仲間意識の醸成に努めていただくこととしています。

ヒアリングの結果は、書面にまとめられた上、アニメーター育成検討委員会に提出され、その検討を経た上で、年度末に提出される報告書に記載されます。

このようなヒアリングチームの役割を果たしていただくためには、アニメーター育成検討委員会との連携が重要です。そこで、アニメーター育成検討委員会には、ヒアリングチームからもオブザーバーとしてご参加いただき、育成方針策定の過程を直接見聞きしていただくことにより、情報と意識の共有を図っています。

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プロジェクト事務局側で育成を担うのは、アニメーター育成検討委員会と今回ご紹介したヒアリングチームです。プロジェクトの柱はあくまで現場のOJT([On the Job Training]=実際の作品制作の過程における計画的指導)にありますが、プロジェクトでは、今回触れた全体講義などのOFF-JT([OFF the Job Training]=作品制作を離れた講義等)も併用しています。

全体講義の第1回までは既に1ヶ月を切っており、こちらについても準備作業が急ピッチで進められています。全体講義は、原則として4社のメインスタッフが全てご参加いただくものです。(株)ピーエーワークスさんからは、富山から14名の若手原画を含む皆さんがおいでいただけることになっています。

これらOFF-JTの構成とそのねらいについては、記事を改めてご紹介させていただきます。