2010年7月25日日曜日

制作ラインの運営方針

プロジェクトに参加いただく4社、4つの制作ラインの運営方針についてご案内します。

プロジェクトには、4つの制作会社((株)アセンション、(株)テレコム・アニメーションフィルム、(株)ピーエーワークスおよび(株)プロダクション・アイジー)にご参加いただいています。各社にお願いしている制作ラインの運営方針は、主として次のとおりです。

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1.社外に動画、仕上げ、撮影等の工程を外部委託(再々委託)する際には、事務局による事前の書面承認が必要
  
アニメ制作は、一般に社内で完結するものではなく、美術、撮影その他含め、社外の方々のご協力が必要です。一方、プロジェクトは公共事業という性質上からも、また制作の実態把握という調査研究の必要性からも、再々委託を自由に認めるというわけにはいきません。

そこで、各社が、社外にプロジェクトの業務の一部をお願いする場合には、事前にその旨をプロジェクト事務局にお届けいただき、その承認を得ていただかなければならない、という仕組みを採用しました。これは、同様の下請構造をもつ他業種では普通に用いられている仕組みです。

承認を要する対象には、美術や撮影といった外部の会社や団体だけでなく、社員ではないフリーランスのアニメーターなどの個人も含まれます。法的にみれば、作品毎の契約で働いたり、一定期間内をある特定のスタジオに「所属」して働くアニメーターも、その制作会社やスタジオとは別個の存在です。そこで、各社からご提出いただく「スタッフリスト」には、こうした方々のお名前や所属についてもご記入をお願いしています。

2.社内処理が必要な作画工程は原画まで

プロジェクトに参加の各社には、作画工程のうち、原画に関しては社内での処理をお願いしています。

プロジェクトでは、アニメの制作工程のうち、プリプロダクション(絵コンテ等)は、監督ご自身が主として制作いただくことをお願いしています。その後、作画工程(プロダクション)はおよそ、原画・動画・仕上げ、美術・背景、3DCGと3つに分かれます。

  これら3つのうち、美術・背景、3DCG、それに動画・仕上げについては、1番の手続と3番の国内処理を守っていただく限り、社外に再々委託をしても構いません。これは、我が国におけるアニメ制作の実情を考慮したものです。

これに対し、原画工程(作打ち後、レイアウトから原画まで)については、各社に設置される作画室という物理的な1室の中で、その全てが行われなければなりません。作画室とは、監督、作画監督、作画監督補、中堅原画アニメーター、そして若手(原画)アニメーターの全員が集まり、プロジェクト作品を制作するための場所です。「作画室」の場所、開室時間(例:朝10時から18時まで)、休日等については、予め各社から、プロジェクト事務局宛にお届けいただいています。

もちろん、これらのスタッフのうちには、この作品限りの契約で各ラインに参加される、フリーランスや他社所属のアニメーターも含まれます。その意味で、このルールは「参加アニメーターの全てが社員でなければならない」というほど厳しいものではありません。しかし、事業の趣旨から、「原画以上の作画チーム」については、各社で文字通り1箇所に集まり、チームとして育成と作品づくりに専念することが期待されています。

3.プロジェクトに関する業務処理は、全て日本国内で完結すること

プロジェクトの各工程は、全て日本国内で処理されなければならず、国外に下請けに出すことはできません。

一般に、商業アニメの動画や仕上げ工程に関しては、その8割以上が日本国外で処理されているといわれています。今回のプロジェクトでは、貴重な税金を使わせていただいており、国内で動画を担当されているアニメーターの方々の育成をも実現するため、海外への下請が禁じられました。1番に記載した「再々委託の原則禁止」は、国内処理を確認するための取り組みでもあります。

4.主なスタッフのプロジェクトに対する「専念義務」

各制作ラインの主なスタッフ、すなわち作画監督、作画監督補、中堅原画アニメーター、そして若手(原画)アニメーターについては、それぞれ程度の差がありますが、約3ヶ月間におよぶ作画期間中、プロジェクトに対する「専念義務」を負っていただきます。

もっとも厳しい義務を負うのは、若手(原画)アニメーターです。以前の記事でもご紹介したとおり、若手アニメーターは作画期間中、プロジェクト以外の仕事をすることはできません。作画室開室時間中は、原則として作画室にいなければならず、それ以外の時間や休日に他の仕事を掛け持ちすることも禁じられています。これは、通常よりも単価がよく、ある程度の収入は保証される代わり、期間中は作品鑑賞、デッサンやアニメーション技法の勉強等、普段はなかなか取り組めない自己研鑽に取り組んで欲しいという趣旨です。

これに対し、作画監督、作画監督補、中堅原画アニメーターについては、作業室の開室時間中に限り、作業室の在室とこのプロジェクトに関する業務のみを行うことをお願いしています。なお、監督についてはこの限りではありませんが、例えばピーエーワークスの吉原監督は、作画期間中は基本的に富山のスタジオに詰めておられるご予定と伺っています。

5.制作予算の配分と作画予算の固定

各社に提供される制作予算は、原則として各社にご提出いただいた予算表に記載の用途以外に流用することはできません。とりわけ、プロジェクト計画書15頁イで「作画料固定部分」としている作画予算については、プロジェクト事務局の事前の承認なしに一切の変更をすることはできません。

また、原画の平均単価2万円、動画の平均単価600円といった金額は、すべて参加するアニメーターや演出の方々の手取り額です。受託制作会社はもちろん、動画が社外に再々委託に出された場合であっても、作画料固定部分に書かれた金額から、管理料などの名目で別途手数料を差し引くことはできません。

6.ヒアリングの実施と各種調査

作画期間中、各制作ラインには、ヒアリングチームからそれぞれ担当の1名が随時、ヒアリングにお邪魔します。作画室の場所、開室時間と休日をあらかじめ届けていただくのは、このためでもあります。ヒアリングチームには、各制作ラインに参加の若手アニメーターの方々にとって、気軽な悩み相談などもできるよう、なるべく頻繁に特に事前の予約などもなく、作画室に行って様子を見たり、話を聞いたりしていただくよう、お願いしています。

そのほか、1番から5番までに記載したルールがきちんと守られたかどうかについては、年度末の事業終了時に作成される報告書に記載されます。そのため、プロジェクト事務局は、各社に対し、必要な資料や情報をご提出いただくよう、お願いできることとされています。

そのようなことはないと確信していますが、万一、重大なルール違反が見つかった場合には、公共事業という性質上、プロジェクト事務局としても、文化庁の要請に基づき、契約解除も含めた厳格な対応を検討していかなければならないこととなります。

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相当長文となってしまいましたが、これでもプロジェクトの「ルール」は全てではありません。制作会社の皆さんには、それぞれのルールに関する多数の書類の作成・提出をお願いしており、よくご対応いただいております。全く新しい事業なので、書類のひな形を作成するのも、そのひな形や方針に沿って書類を作成するのもなかなか大変です。しかし、きちんとした資料・データの蓄積がなければ、将来に繋がっていきません。プロジェクトに参加の皆様のご理解・ご協力を仰ぎつつ、今後も対応を継続してまいります。