2010年8月10日火曜日

企画紹介:「おぢいさんのランプ」/テレコム・アニメーションフィルム

企画紹介の最後は、株式会社テレコム・アニメーションフィルムさん、「おぢいさんのランプ」(滝口禎一監督)です。なお、ご紹介する情報は全て現時点の内容であり、今後予告なく変更されることがあることを予めお断りいたします。

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あらすじ

原作は、新美南吉「おぢいさんのランプ」です。

まだ日本に電燈というものがない頃のはなし、ランプという照明器具がやっと村々に普及し始めたころのはなしです。

巳之助少年は、初めて行った町で、夜の闇を明るく照らすランプを見つけます。彼は、「そうだ!!このランプを村に広め、村の生活を明るく灯してやろう」そして、身を立てようと思い立ちます。頑迷な村人たちは、始めはランプを手にしようとはしませんでした。そこで巳之助は、そのランプを村で一軒だけの雑貨屋に預けることにしました。雑貨屋の店先に吊り下げられたランプは夜でも明るく店内を照らしたのです。

ひとつめのランプが売れると、巳之助はその金で次のランプを仕入れ、次のランプが売れると今度は二個仕入れ、と商売を拡げて行きました。ランプは飛ぶように売れ、村は巳之助が願ったように明るくなり、そして、巳之助は更に遠くの村々を回りランプを売りました。

ところがある日町に行くと、道の脇に木の柱を立てている男たちがいました。電気というものの通り道を作っているのだというのです。

古いものが新しいものに取って代わられる。それは時には職を失うことにもつながります。しかし、私たちはこの話しを単なる感傷・ノスタルジーで語るのではなく、そんな事態になっても、より良いものを求め生きる人間のエネルギーとして表わしたいと考えています。


キャラクター


作画チーム(作画監督補佐以上)

監督 - 滝口 禎一
(代表作 - 「”空の境界”第四章『伽藍の洞』」、TVシリーズ「無人惑星サヴァイヴ」ほか多数)

キャラクターデザイン/作画監督補佐 - 高須 美野子
(代表作 - 「二十面相の娘」、「リルぷりっ」)

作画監督 - 友永 和秀
(代表作 - 「姿三四郎」、「ルパン三世 風魔一族の陰謀」、「リトル・ニモ」、 「サイバーシックス」ほか多数)

※初出記事において、高須様のお名前をまちがって表記しておりました。おわびして訂正いたします。
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各社の企画紹介、いかがでしたでしょうか。今後も、各社の制作に支障を来さない範囲で、制作の進捗状況などをお伝えしていければと思っております。ご期待下さい。

2010年8月6日金曜日

企画紹介:「キズナ 一撃」 / ascension

プロジェクト参加各社の企画紹介、第3弾は株式会社アセンションさん、「キズナ 一撃」(本郷みつる監督)をご紹介します。なお、ご紹介する情報は全て現時点の内容であり、今後予告なく変更されることがあることを予めお断りいたします。

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作画チーム(作画監督補佐以上)

監督 - 本郷みつる
(代表作 - 映画監督作「映画クレヨンしんちゃん アクション仮面VSハイグレ魔王」、「映画クレヨンしんちゃん ブリブリ王国の秘宝」、「映画クレヨンしんちゃん 雲黒斎の野望」、「映画クレヨンしんちゃん ヘンダーランドの大冒険」、「映画クレヨンしんちゃん 金矛の勇者」、劇場映画「サクラ大戦 活動写真」他多数、TVシリーズ監督作「REIDEEN」、「デルトラクエスト」、「IGPX」、「クレヨンしんちゃん」他)

作画監督/キャラクターデザイン - 末吉 裕一郎
(代表作 - 「カラフル」、「河童のクゥと夏休み」、「マインドゲーム」、劇場「クレヨンしんちゃん」シリーズ、TVシリーズ「クレヨンしんちゃん」等)

作画監督補佐 - 植村 淳
(代表作 - 「カラフル」、劇場「クレヨンしんちゃん」シリーズ、劇場「ドラえもん」シリーズ、劇場「パーマン」)
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育成方針としては、「格闘シーンをウソなく丁寧に」描き、「長廻しの日常シーン、食事シーンなど、通常のテレビシリーズでは敬遠するようなシーンも取り入れ」、難易度の高いカットにも挑戦したいというお話しがありました。

企画紹介も、最後にテレコムさんを残すのみとなりました。次回更新をどうぞお待ち下さい。

2010年8月5日木曜日

研究紹介1:アニメーション産業研究会「アニメーション産業研究会報告書」(平成14年6月)

プロジェクトの企画作成にあたっては、多くの研究を参考にさせていただきました。今回は趣向を変え、若手アニメーター育成プロジェクトの基礎となった研究論文をご紹介します。

アニメにおける人材育成に関する行政の取り組みは、これまで主としてプロデューサー育成とアニメーター・演出育成の2つの観点から進められてきました。今回は、先にプロデューサー育成をごく簡単に概括します。

アニメーションが「産業」として認知され、行政による調査研究の対象とされたのは、ごく最近のことです。この分野における先行研究としては、 「東京におけるアニメーション産業集積の構造と変容」(半澤誠司 、経済地理学年報 47(4) 56‐70、2001年)や「産業 アニメーション産業研究会報告書 - 製作プロダクションによる自立したビジネスの確立に向けて」(経済産業省商務情報政策局文化情報関連産業課[メディアコンテンツ課]、経済産業公報 (15085), 3-7, 2002年6月)等があります。なお、この年(2002年)の5月には、一般社団法人日本動画協会(当初は有限責任中間法人)が設立されています。

後者は、アニメ産業に関する国レベルの調査研究報告としては、最も早い時期に記されたものです。同報告書は、その冒頭で既に
アニメーションの製作過程の海外移転が進行しつつあり、現在の日本の産業界全体の問題である「産業の空洞化」がここでも顕著化しつつある。また、日本のアニメーションクリエーターは一般に厳しい労働環境に置かれており、将来の人材という基盤が失われつつあるのではないかとの指摘もなされている。」(3頁)
との問題意識を提示しており、日本におけるアニメーターの若手人材不足が、当時、既に問題となっていたことが分かります。

同報告書は、現状認識について
動画を中心とした製作過程を韓国、東南アジア等の海外に発注する大手製作プロダクションが増加しつつあり、国内に動画を描く者が減り、それが原画製作者にも影響し、従来のアニメーションクリエーター育成の過程が空洞化しつつある。」(4頁)
との見方を示した上で、この問題に対する対応の方向性として、
今後、将来のクリエーターを養成していくためには、アニメーションクリエーターを目指す層の拡大を図ることが必要である。このため、アニメーション業界全体として、人材の育成方策について検討する必要がある。
しかし、たとえアニメーション業界を目指す者がいても、現状ではプロダクションは自社で人材を養成するための資金的余裕がなく、また有能なクリエーターが存在しても低賃金や厳しい労働環境を忌避して他の業界に流出してしまう。この状況を打開するためには、プロダクションが自立したビジネスを主体的に行うことによって、適正な報酬を確保する本来あるべきビジネスモデルを確立することが不可欠である。プロダクションに十分な報酬が行くようになれば、自社内で人材の育成を行う余裕も生じ、またクリエーターの処遇も改善するものと考えられる。」(4頁)
との方針を打ち出しています。

若手アニメーター育成プロジェクトは、アニメーターの育成を主眼としていますが、このプロジェクトだけでこの問題が解決できるわけではありません。抜本的に日本国内におけるアニメーターを含めたアニメ制作に携わるクリエーターの人材育成を実現するにはどうしたらよいか、という命題については、私も今のところ、この基本方針しかないだろうと考えています。つまり、

  1. アニメーター、演出家や制作進行等を含めたアニメ制作に携わる制作者達に対し、対価を提供するプロダクションが適正な収益を確保できる環境を実現する。
  2. プロダクションは、確保した収益の中から制作者に対して適正な報酬を支払い、自社内で人材の育成を行うことによって、自社の制作力=競争力を高める。

というサイクルです。今回のプロジェクトは、監督・プロダクション主導で製作/制作された作品の著作権を委ねることにより、ささやかながらもこの基本方針の実現に向けた一助となることも狙っています。

報告書の翌年、経済産業省は「コンテンツプロデューサー育成カリキュラム」と題し、プロダクション主導の新たなビジネスモデルを実現する人材の育成を目指したプロデューサー育成の取り組みを始め、その方向性は今年度(平成22年度)も「米国フィルムスクールにおける留学支援制度の実施」等として、継続されています。必ずしも即効性を期待できる取り組みではないだけに、これらの成果の程はまだ分かりません。しかし、現状の根本的な打開には必要不可欠である以上、粘り強い取り組みを期待したいですね。

研究紹介の次回は、本プロジェクトが理論的基礎とさせていただいた独立行政法人 労働政策研究・研修機構の労働政策研究報告書 No.25「コンテンツ産業の雇用と人材育成」をベースに、アニメーター人材育成のこれまでと本プロジェクトの位置づけをご紹介します。

なお、このサイトには、今回ご紹介した論文を含め、アニメーションに関する様々なレポートや論文が紹介されています。興味のある方は、どうぞご参照ください。

2010年8月2日月曜日

企画紹介:「万能野菜 ニンニンマン」 / P.A.works

プロジェクト参加各社の企画紹介、第2弾は株式会社ピーエーワークスさん、「万能野菜 ニンニンマン」(吉原正行監督)をご紹介します。なお、ご紹介する情報は全て現時点の内容であり、今後予告なく変更されることがあることを予めお断りいたします。

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作画チーム(作画監督補佐以上)

 監督/キャラクターデザイン - 吉原 正行
  (代表作 - 「幽☆遊☆白書」、「攻殻機動隊GHOST IN THE SHELL」、「メダロット」、「人造人間キカイダー THE ANIMATION」、劇場版「攻殻機動隊S.A.C」、「攻殻機動隊 2nd GIG」、「攻殻機動隊 S.S.S」、「精霊の守り人」、「東のエデン」、「東のエデン」劇場版Ⅰ、「東のエデン」劇場版Ⅱ)

 作画監督 - 川面 恒介
  (代表作 - 劇場版「攻殻機動隊 S.A.C」、「攻殻機動隊 2nd GIG」、「スパイダーライダーズ」、「レイトン教授と不思議な町」、「レイトン教授と悪魔の箱」、「true tears」、「CANAAN」、「レイトン教授と最後の時間旅行」、「レイトン教授と永遠の歌姫」、「Angel Beats!」)

 作画監督補佐 - 倉川 英揚
  (代表作 - 「ゴルゴ13」・「装甲騎兵ボトムズ」・「こちら葛飾区亀有公園前派出所」)
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この企画は、吉原監督が長年、個人的に温めておられたものだと聞いております。ご応募いただいた書面には、「柔らかい動き、誇張表現等、作画の根本的な技術を習得するための作品が市場から求められる機会が減りました。今回は擬人化されたキャラクターをコミカルに、生き生きとした動きで表現することを目指します。」とありました。

また準備が整い次第、次の企画をご紹介してまいります。どうぞお楽しみに。